CLUB HARIE

2017年1月22〜23日、フランス・リヨンで行われる世界最高峰の洋菓子の国際大会「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー2017」にクラブハリエ山本隆夫が出場。世界一に挑みました。

クープ・デュ・モンド 2017 出場

2017年1月22〜23日、フランス・リヨンで行われた洋菓子の国際大会「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー2017」にクラブハリエ代表取締役社長/統括グランシェフの山本隆夫が出場しました。
各国の予選を勝ち抜いたパティシエたちがその腕を競う世界最高峰の場として知られるこの大会。山本は氷彫刻・アントルメグラッセ(アイスケーキ)担当として、シュゼット・ホールディングスの駒居崇宏シェフ、森永商事の植﨑義明シェフとともに、企業の枠を超え、日本代表“チームジャパン”として頂点を目指しました。
今回チームキャプテンとして世界に挑んだ山本。和菓子舗「たねや」の次男に生まれ、現在、たねやグループの洋菓子部門「クラブハリエ」グランシェフとして経営を担っています。これまでには様々な紆余曲折、試練がありました。クラブハリエの歴史、そして山本のストーリーをご紹介します。


Episode.7 / 2017.09.11 UPDATE

パティシエの“夢の舞台”。クープ・デュ・モンド フランス本選

「ジャポン」
表彰式で「日本」の国名が呼ばれたのは、準優勝でした。
首にかけられたメダルの色はシルバー。
その瞬間、選手たちの顔色が少し曇ったようでした。山本の目には堪えきれない涙が。
「世界一」だけを目指してきてチームJAPANにとって、そして、持てる全てを出し切った選手たちにとって、瞬時には受け入れがたい結果でした。

1位フランス
2位日本
3位スイス

しかし、その結果は22カ国(各大陸予選を含めると参加国は計50カ国)中2位という、素晴らしいものであることに違いはありません。世界のトップパティシエをしのぎ、日本の洋菓子レベルの高さが再び認められた瞬間でもありました。

2017年1月22日。
フランス・リヨンの現時時刻で午前6時、世界最高峰の洋菓子コンクール「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」の10時間にわたる長い闘いがスタートしました。
この大会は、世界中から約19万人が来場する欧州最大規模の外食産業見本市「SIRHA(シラ)」内で開催される注目イベントの一つで、2年に1度の開催で今年15回目。
歴史と伝統ある洋菓子職人にとってまさに“夢の舞台”です。今年は22カ国が出場し、各国の予選を勝ち抜いた代表選手が“世界一のパティシエ”の座を目指し腕を競います。

2日間で11カ国ずつ競技が行われ、チームJAPANは初日、最大の強豪・開催国フランスらと共に競技をスタートしました。

山本が担当する氷彫刻は競技の序盤。縦1m、横50cm、厚さ25cmの氷2ブロックを、チェーンソーやノコギリ、ノミを使って削り、表現したい形をつくり出します。

みるみる溶けていく氷を扱うのは、まさに時間との勝負。張り詰めた空気のなか、一心不乱に氷に向かう山本の姿がありました。
日本では秋から冬にかけて、時には氷点下近くまで気温の下がる屋外で氷彫刻の特訓を積んできた山本。実は渡仏直前の練習中、誤ってドリルで左手を突いてしまい、何針も縫う怪我を負っていました。痛みをこらえての本番。会場の気温の高さは予想以上のもので、氷の温度と会場の気温差が大きく、氷塊に大きなヒビが入るというアクシデントにも見舞われました。
しかし、見事完成させた「ウッドベースを弾くカエル」。カエルとウッドベースのパーツを最後に合体させるという繊細な技を駆使し、日本チームのテーマ「JAZZ FROG(カエルのジャズ)」を表現した作品は、大きな注目を集めました。

山本は氷彫刻とアントルメグラッセ(アイスケーキ)を担当。
アメ細工・アントルメショコラ(チョコレートケーキ)担当の駒居崇宏シェフ、チョコレート細工・アシエットデセール(皿盛りのデザート)担当の植﨑義明シェフも渾身の力を込め、それぞれの作品をつくり上げてゆきます。

味覚を競うケーキやデザートは、その場で切り分けられ、審査員が食べて判断をします。見た目・味・テーマ性・オリジナリティなど、厳密な審査が終始続きます。
審査員は、選手を率いてきた各国の団長らが務め、チームJAPAN団長の寺井則彦シェフも、3人をサポートしながら審査を全うされました。

観客席では、チームJAPAN応援団の声が大きく響いていました。各国の応援の中でもひときわ元気に、そして強い思いで選手へエールを送ります。
選手が所属する3社の応援団に加え、チームJAPANを支援してくださるスポンサーの方々、そして将来パティシエを目指す辻調グループフランス校とスーパースイーツ製菓専門学校の学生さんも一緒に。
手作りの応援歌で「植﨑!駒居!山本!」と呼び掛けました。
この懸命な様子は他国の応援団の共感を呼び、いつの間にか一緒になって会場を盛り上げていました。

競技終了。
チームJAPANはすばらしい作品を完成させました。
細部まで作り込まれたチョコレートのピエス、アメのピエス、そしてチョコレート彫刻。3人のシェフの手で表現されたカエルたちはまるで生きている様で、今にもジャズが聴こえてきそうなほど。
見る者に大きな感動を与え、日本の洋菓子技術のレベルの高さを世界に示した瞬間でした。
作品を前に、選手たちは「やりきった」という晴れ晴れとした表情。その姿を見て、応援団も大きな喜びに包まれました。

2日目、残りの11カ国の競技が終了し、表彰式が行われました。チームJAPANの結果は22カ国中2位、準優勝でした。
山本を含め、チームが目指してきたものは「優勝」。それしかなかったため、悔しさももちろんあります。 しかし、それ以上に大切なことを、3人のシェフは伝えてくれました。

「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」は、洋菓子という一つの道を極めた者しか立てない特別な場所です。 「最後は自分との闘い」と山本は言いました。
常に自分の限界に挑戦し続けることの意味を、山本は、精一杯競技する姿で示していました。
この力強い姿勢は、若い職人たちにも受け継がれています。

来年1月には、イタリアで行われるパティシエール(女性洋菓子職人)の世界大会「The Pastry Queen(ザ・ぺストリー・クイーン)」に、クラブハリエ 日牟禮館の森田ひろ子が日本代表として出場します。山本ら、クラブハリエのトップシェフたちの世界に挑み続ける姿を追い、世界一を目指します。 クラブハリエの挑戦はこれからも続きます。